先日、ある犬種名の語源を調べる機会がありまして、せっかくなのでこれを機に、日本や海外で人気の犬種の名前の由来や原産地を色々調べてみることにしました。
1.プードル(Poodle)
プードルはドイツ出身の小型犬です。
ドイツ語のPudel(プデル)、「水中でバチャバチャと音を立てる」という意味ですが、これが名前の由来になっています。
英語のpuddle(水たまり)もpudelと同語源だと思います。
もともと、飼い主が銃で仕留めた水鳥を回収するのが主な仕事だった為にこの名前がついたようです。
2.チワワ(Chihuahua)
チワワはメキシコ出身の小型犬です。
メキシコ北部のチワワ州原産であることから名づけられました。
秋田犬や土佐犬など、地名が名前になっている犬種は日本にも沢山ありますね。
3.レトリーバー(Retriever)
レトリーバーはイギリス出身です。
ゴールデンやラブラドールなどの種類がありますね。
読んで字のごとく「回収者」がその名前の由来です。retrieve(リトリーブと発音します)は英語で「取ってくる」「回収する」という意味の動詞です。
もともとは、猟師が撃ち落とした水鳥を陸地に持ち返るのが彼らの仕事でした。
そういう意味では、プードルと役割が似ていますね。
4.シェパード(Shepherd)
シェパードはドイツ出身の大型犬です。
Shepherdは英語で「羊飼い」を意味しますが、元々は牧羊犬として活用されていました。
Sheep(羊) + Herd(群れを先導するという意味の動詞)が組み合わさってできた言葉です。
聖書に「The Lord is my shepherd; I shall not want.」という一節があります。 「主は私の羊飼い。私は、乏しいことがありません。」という意味ですが、聖書では、人はよく羊にたとえられています。羊はすぐに道に迷ったり、倒れると自分で立ち上がれなかったり、他の動物に襲われたりする弱い生き物です。そんな羊のように弱い私達人間だからこそ、シェパードのもつ力強さに魅かれるのかも知れませんね。
5.ビーグル(Beagles)
ビーグルはイギリス出身です。
漫画PEANUTSに登場するあの有名なスヌーピー(snoopy)のモデルにもなっている犬種ですね。
ちなみにsnoopは動詞で「嗅ぎ回る、探る、コソコソ詮索する、おせっかいを焼く」などの意味があります。スヌーピーには可哀そうですがあまり良いニュアンスでは使われません笑
ビーグルはかなり古い犬種で、ローマ時代から存在し、ウサギ狩りを業とする仕事犬でした。ずっと昔からいるため、名前の由来に関しては実ははっきりとしておらず、フランス語のbeugler(大声で鳴く)が元になっているという説と、古英語のbegele(小さい)から来ているという2つの説が有力です。
6.ダックスフント(Dachshund)
ダックスフントはドイツ出身です。
ドイツ語のアナグマを表すダックス(Dachs)と、犬を表すフント(Hund)を合わせた、いわゆる「アナグマ犬」という意味になります。
ダックスフントは、もともとアナグマやウサギなどの小動物を巣穴から駆り出す役目を担っていた猟犬でした。小さな巣穴に潜り込むために、胴体が長くなったのもうなづけますね。
話は少し変わりますが、グレイハウンドやウルフハウンドなど、~ハウンド(hound)という名前のつく犬種が沢山います。
~houndとは、英語で「~猟犬」という意味になります。たとえば、ウルフハウンドは狼猟犬(オオカミを狩猟する犬)、フォックスハウンドは狐猟犬ということになりますね。
ドイツ語のhundと英語のhoundは同語源ですが、houndが猟犬のみを指すのに対して、hundは犬全般(英語で言うdog)を表します。ちなみにhundはフンドではなくフントと発音します。最後のdは濁りません。
7.ブルドッグ(Bulldog)
ブルドッグはイギリス出身です。
元々は日本の土佐犬と同じような闘犬で、13世紀頃からイギリスで行われていた「ブル・ベイティング(bull-baiting)」という見世物で使う為に改良された犬種になります。ブル・ベイティングとは、中世にイギリスで流行した、鎖でつないだ雄牛に犬をけしかけて、どの犬が最初に牛の鼻先にかみついて殺すかを競う賭け事であり、1835年の動物虐待防止法(Cruelty to Animal Act)により禁止された。
「ブル(bull)」とは、英語で「雄牛」という意味でしたね。金融用語で強気の買い気配などをbullと言うこともあります。反対に弱気はベア(bear=クマ)と言いますが、なぜかは知りません。クマも十分強いと思うけど笑
牛の話がでたので、ついでに様々な牛の呼び方も整理しておきましょう。
雄牛のbullに対して、牝牛はcowと言います。
またox(アックスと発音します)は、虚勢された雄牛を指します。
あとプロ野球の球団の名前にもなっているbuffalo(バッファロー)、これは主に北米にいる水牛ですね。
cattleという単語があります。
これも牛という意味ですが、こちらはpeopleと同じように集合名詞的に使います。a cattleとかcattlesとは言いませんのでご注意を。
8.テリア(Terrier)
テリアはヨークシャー・日本・ボストンなど様々な種類があり、出身はそれぞれ異なります。
「テリア」という名前はラテン語のterra(土・地面)から来ています。
その名の通り、地面を掘る能力に優れており、ねずみやウサギなどの地中や地面に生息する動物の狩りに使われていました。
イギリスで人気の高い犬種の一つにブルテリアがありますが、これはブルドッグとテリアを掛け合わせた犬種になります。交配前の二種がどちらも気性が荒いため、当然ブルテリアも好戦的な性格であり、しばしば闘犬として用いられています。
ところで、テリアの語源となったラテン語「terra」ですが、実は我々の馴染みのある単語にもよく使われています↓
territory(テリトリー):これは、皆さんよくご存じのとおり、領土や地域という意味ですね。
terrace(テラス):今では建物の突き出した部分のことを指すことが多いですが、元々は「盛り土」という意味でした。棚田のことは「terraced rice field」と言います。
terraform(テラフォーム):もともとは(惑星を)人が住めるように改良することで、ソフトウェアの名前にもなっています。映画テラフォーマーズが有名ですね。
この他にも、terrain(地形)、terrestrial(陸生の、地球の)などまだまだ沢山の派生語があります。
ちなみに、スティーブン・スピルバーグ監督の映画「E.T.」は、extra-terrestrial(地球外の)という単語の略で、これはterrestrialの反意語です。
また、最初のtを大文字にしたTerraは、ギリシャ神話における大地の女神であるGaia(ガイア)のローマ名でもあります。
9.スピッツ(Spitz)
スピッツの出身は定かではないですが、北極地方かシベリアではないかと言われています。
名前の由来はドイツ語のSpitzenから来ており、「鋭利な、尖った」という意味があります。口吻がとがり、耳が立っていることからこの名前がついたとされています。
spitzenと同語源の英単語としては、spike(スパイク)やspit(海に細長く突き出した砂州)などがあります。spear(槍)やspice(スパイス)なども同語源のように思いますが、詳細は分かりません。誰か教えてください笑
スピッツは日本の有名なバンド名にもなっていますね。実際、ボーカルの草野マサムネさんは、辞書でこの単語を見つけて発音や意味(当時はパンクバンドで尖っていたようです)が気に入ったことから命名したらしいです。
10.雑種(mixed-breed)
最後はやっぱり雑種です。雑種のことは英語でmixed-breed、または単にmixedと言います。
mixは動詞で「混ぜる、混ざる」という意味ですね。ミキサー(mixer)と言えば、料理における泡だて器や、音楽で使われる音響調節装置のことを指します。
雑種犬に対して、何らかの血統書付きの犬のことはa pedigreed dogと呼びます。pedigree(ペディグリー)は名詞で血統書という意味です。ドッグフードの名前にもなっていますね。
またまた余談ですが、pedigreeは血統書の他に「家系図」という意味があります。(英語ではfamily treeとも言います。)
pedigreeの語源はラテン語の pes (足) + grus (鶴)であり、「鶴の足」という意味になります。家系図がちょうど鶴の足のように見えるところから名づけられたようです。
pede、pedo、pes、podなどはいずれもラテン語で「足」を意味しますが、この「足」が組み込まれている単語は山のようにあります↓
pedal(ペダル:足でこぐもの)
pedometer(万歩計:足の数を図るもの)
centipede(ムカデ:文字通り100の足を持つ。centはフランス語で100)
pedestrian(歩行者:足で通りを歩く人)
pedicure(ペディキュア:足のケア)
tetrapod(テトラポッド:4脚の構造物、テトラは「4つの」という接頭語)
impede(邪魔する、妨害する:「足を突っ込む」から)
他にも沢山ありますから、是非調べてみてください。
タンチョウなどの鶴は、いまでは英語でcrane(クレーン)と言いますが、もともとはgrusと言いました。
あまり有名ではないですが、鶴座という星座があり、これはGrusと言います。
おわりに
以上、雑種も入れて合計10種類の犬種について、その出自や名前の由来について調べてみました。ちなみにうちでは猫を飼っていますが、犬は飼ってません笑
最後に、犬は英語でdogといいますが、実はcanine(ケーナインと発音します。)とも呼ばれます。発音が同じなので、K9と表記されることもあります。
canineは形容詞で「イヌ科の」という意味があり、canine animalsと言うとイヌ科動物全般を指します。
イヌ科やネコ科といった、~科という英語表現についても色々書きたいことがありますので、これらについてはまた別の記事で紹介しようと思います。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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