英検協会が主催する、2020年度以降の「大学入試英語成績提供システム」利用型英検についての予備校向け説明会に行ってきました。
私自身にとっては殆ど既知の内容ばかりでしたが、自分自身の頭を整理する為にも、現時点(2019年9月時点)で分かっている内容を簡単にまとめてみました。
約2時間にわたる説明会のうち、半分以上の時間は事前収録された動画を見るだけのものでしたが、自分一人であれだけ長い動画を通しでみることはないと思いますので、わざわざ新幹線に乗って広島市内まで行った意味はあったのだと思います(プラス思考)
ちなみに、説明会で上映された動画はこちらから誰でも視聴できます
↓↓
以下の記述は、基本的に
現高2生またはそれ以下の方を
対象にしています
併存する「2つの」英検
大学入試に使用することができる「英検」は、下記の2種類があります:
① 従来型英検(以下"旧英検"と呼びます)
② 英検S-CBT1day(以下"新英検"と呼びます)
細かく言うと他にも何種類かあるのですが、いわゆる一般の受験生は上の2つだけを認識しておけば十分だと思います。
試験方式・申込方法等の違いについて
旧英検は、大昔から行われている、いわゆる従来型の英検です。
中身は既によく知られているので詳細は省きますが、新英検と異なる点に注目してみました。
受験の申込方法:個人での申込の他、学校・予備校単位で取りまとめて申し込むことが可能です。
受験会場:一次試験については、全国各所に設置された本会場に加えて、高校や中学校などの準会場での受験が可能です。
試験方式:一次試験は問題用紙も解答用紙も紙で、二次試験は生身の人間による紙の面接カードを使った面接が行われます。
合否判定方式:一次試験に合格できた人だけが後日二次試験に進めるという、いわゆる二段階選抜方式になっています。
これに対して新英検は、2020年度以降の大学入試改革に対応する為に、英検協会が(文部科学省に半ば強引に命令されてしぶしぶ)開発したもので、筆記・リスニング・スピーキングが同じ日に行われます。
受験の申込方法:個人単位での申込のみ可能です。学校単位での申し込みは行っていません。これはGTECや他の民間試験を利用する場合も同じです。また後述しますが、新英検の受験には約半年前から「予約申込」をしておくことが必要です。
受験会場:全国186エリアに設置予定のテストセンターになります。高校や中学校などでは受験することはできません(2019年8月時点)
合否判定:合否判定基準は基本的に旧英検と全く同じですが、一次試験(筆記・リスニング)の結果如何に関わらず、二次試験(スピーキング)に進むことができます。後述しますが、新英検の合否それ自体は大学入試英語成績提供システムとは関係ありません。
試験方式:筆記試験については、コンピュータ画面を見ながら紙の解答用紙にマークをしていく方式です。リスニングも同様で、コンピュータ画面を見ながら紙の解答用紙にマークをしていく方式ですが、音声を聞くためのヘッドセットを装着することになります。
スピーキングテストについて:旧英検の面接に相当するスピーキングテストですが、ヘッドセットを装着して、コンピュータ画面上のAI面接官と対話形式で進めていくものになります。デモ画面を見る限り、面接官はネイティブを想定しているようでした。スピーキングの問題自体は、基本的には旧英検の二次試験と同じだと考えてよさそうです。具体的には、面接カードをコンピュータ画面上で見せられ、パッセージを音読した後に、AI面接官の質問に答えていくという流れになります。
!注意(こんな落とし穴があります)!
国公立大学を受験する予定の受験生は、高2終了時点での旧英検の取得級に関わらず、新英検を必ず受験しなければいけません。
たとえあなたが既に英検1級ホルダーだったとしてもです!
そもそも、高校2年次以前に獲得したCEFRスコアが、大学入試英語成績提供システムに活用できないのがどうしてなのか、その理由はよく分かりませんし、恐らくそもそもそこに理屈なんてないのでしょうが、こればっかりはお上が決めたことなので仕方ありません。
というわけで、高校3年次に受けた二回の新英検の結果が、大学入試英語成績提供システムを介して、大学入試センターの方へ通知されます。
大学入試英語成績提供システムへの登録から、英語民間試験受験までの流れについては、最近開設された文部科学省の「高大接続ポータルサイト」に詳しく載っています(画像をクリックするとリンクに飛びます)
新英検は、3級~準1級まで受験可能ですが、殆どの高3生は一回目で準2級、二回目で2級を受けるのではないかと思います。
ちなみに、新英検においても合否判定は一応出ることは出ますが、英検協会から大学入試センターの方へ通知される結果は、あくまでCEFRスコアの値のみになります。
上記の理由から、余程英語力に自信のある人は準1級にチャレンジしてもいいですが、費用対効果の観点から個人的にはあまりお勧めしません。
準1級の問題は多くの高校生にとって明らかにレベルが高いので、新英検を準1級で受けて低いスコアになってしまうくらいであれば、2級で良いスコアを確実に出しておいた方が、リスクが少ないからです。
もし志望校の優遇措置等の関係で、どうしても準一級を取っておきたいのであれば、高2の冬までに旧英検で取得してしまっておくことをおすすめします。
よくある勘違い
新英検の導入により、高2以前に取得した旧英検の結果は何の役にも立たなくなってしまうのではないか、というような質問をよく受けますが、それは違います。
新英検と旧英検では受験の目的が全く異なります:
新英検 ⇒ 目的は志望大学の出願要件を満たすことただ一点にのみにあり、各大学が出願要件に定める最低限のCEFR(多くはA2またはB1)をクリアしさえすればOKです
旧英検 ⇒ 目的は志望大学における優遇措置や加点措置の権利を獲得することであり、自分の志望大学が採用している加点措置が適用される相当級(通常準1級以上)に合格することです
例えば、広島大学では旧英検で英検準一級を取得しているとセンター試験が満点換算されますが、この扱いは2020年度も変わらないと推測されます。
質疑応答
説明会における質疑で、特に印象に残ったものを2つ挙げておきます:
Q1 部活の大会等、何らかの事情で新英検を受けられなかった場合、どうなりますか?
A2 振替は行いません。受験できる回数が単純に一回に減ります。
Q2 新英検対応の問題集の発売予定はありますか?
A2 ありません。新英検の問題は基本的に旧英検と同じ形式です。
取り敢えず今やるべきこと
(今そこにある危機)
やること①
大学入試英語成績提供システム利用型の検定を(GTEC等ではなく)新英検で受けようと思っている人は、9月になった時点で下記サイトから「予約申込」をする必要があります。
2020年度第1回(2020年4月~7月受験分)の予約申込の受付は、2019年9月に始まる予定です。
ですので、それまでに自分が新英検で受験するのか、それ以外(GTECなど)で受験するのかをまず決めてください。
私個人的には、過去問が充実している英検の方が対策が立てやすいように思いますが、こればっかりは問題との相性がありますので、自分で判断するべきでしょう。
やること②
上記検定試験申し込みとは別に、下記期間の間に大学入試英語成績提供システムの共通IDを取得する必要があります(画像をクリックするとリンクに飛びます)
令和元年11月1日(金)~11月14日(木)
共通IDがないと、いくら資格試験を受験しても、その情報が入試センターに通知されません。
しかるべき時期が来たら、各学校でも別途指示があるとは思いますが、くれぐれも遺漏のないようにしてくださいね。
おわりに
深く調べれば調べるほど様々な疑問と疑念が湧いてくる今回の英語民間試験導入ですが、高校生の皆さんにとって最も大切なことは制度に踊らされず、しっかりと英語の勉強に専念することです。
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