小生の数年間にわたる緻密な観測によると、フィリピン人は概してネコを愛でる民族のようです。
2024年現在フィリピンの人口は1億人をゆうに超えていますが、猫の人口はそれより多いに違いません。
足の向くままにマニラの街なかを歩き回っていると、必ずと言っていいほど野良猫に出くわします。
ショッピングモール周辺、カフェの入口、駅の改札機の上、人が集うところ必ず猫ありといった感じです。
彼らは普段から比国人達の寵愛をうけているせいか、やたらヒトに慣れています。
ちょっと歩き疲れたので道端の敷石に腰を下ろすと、近くで丸まっていた一匹がイソイソと近づいてきて、やれ腹をなでろと仰向けになるわ、やれ抱いてくれと腕に前足を乗せてくるわで、野生動物に自ずから具備されているべき警戒心が一片も感じられません。
おまえ野良猫の沽券はないのかと諭したくなる体たらくぶりです。
いっぽう我が家の保護猫コウタローはというと、もう5年近く飼い猫をしているくせに、小生が近づくだけで脱兎の如く逃げていきます。
施設から引き取った救世主に対して、そんな態度ばかり取ってるといつかバチが当たるぞと説教していますが、所詮は猫なので聞く耳を持ちません。
猫一匹でも世話するとなるとそれなりに大変なものですが、マニラ郊外に住むカミさんの姉夫婦は、実に12匹ものニャンコを飼っています。
腹が減ったときだけ餌を食べに来るノラ達をいれると、常時20匹以上が家を出入りしているそうなので驚きます。
文字通り猫屋敷です。
滞在中に一度、義姉夫婦のキャットフードの買い出しに付き合いました。
20匹分のカリカリ、猫缶、ちゅーるーの類が大型のショッピングカートに積まれていく様はなかなか壮観でした。
支払いの時に恐る恐るレジを覗き見ると、小生の経済力ではジコ破産ならぬネコ破産しそうな額が計上されていました。
ニャンてこと。
帰国前夜、ダンパ・シーサイド・マーケットという、地元民で賑わう市場へカニを食べに行きました。
我々尾道市民が高須のええじゃんへ買い物に行くようなものです。
カミさんの説明によると、まず市場に行って自分で好きな海産物を仕入れて、近くのレストランで調理してもらうというのがここのスタイルなんだそう。
それは面白いと思ったのもつかの間、いざ魚屋の前に来てハタと困りました。
フィリピンでもカニは高級品。
少しでも安くて美味いカニをゲットしたいのはやまやまなのですが、こういった交渉事になると小生はヤドカリの如く気が弱いのです。
「これなど大変結構に存じます」などと恭しく言われると、ついつい値段も聞かず「うむ、それで結構」なんて言ってしまう、我ながら本当に困ったものです。
この点、われわれニッポン人はたとえばあの越南人、なかんずく越南女性たちの逞しさを見習うべきなのかも知れません。
なにせ彼女達ときたら一匹のザリガニを仕入れるにも、水槽から次々と生きた個体を持ってこさせ、気の済むまでつついたりひっくり返したりイジりまわして散々弱らせた挙げ句「ここのはあまりイキがよくない」などと仰ってプイと店を出てしまいます。
まさに生まれながらのハードネゴシエイター。
なるほどそりゃあアメリカにも勝つはずだと得心がいきます。
100%メイドインJAPANのヤドカリハートを持つ小生にはおよそ出来ない芸当です。
結局、最初に声をかけられた魚屋で一匹1,000円ほどの中サイズのカニを、4杯仕入れました。
魚屋のオヤジは小生を金払いのいい上客とみたのか、イカはどうか、魚の新鮮なのがあるぞとなおもしつこく勧めてきたので、カニ食ってまだ腹が減ってたら戻って来るからと適当にごかまして店をあとにしました。
ニッポンジンがみんな金持ちだと思ったら大間違いです、まったく。
買ったカニは、2杯はチリクラブに、残りは醤油蒸しにしてもらいました。
ひとしきりカニと格闘した後は、食後のデザートにと果物屋を覗きました。
こうして赤道直下の南国に来てみると、果物ひとつをとってもふだん日本で目にしないものが存外沢山あることに気づかされます。
シンガポール暮らしが長かったせいで、マンゴー、パパイヤ、ドリアン、マンゴスティン、ロンガンあたりは見れば分かるようになりましたが、明らかに見たこともない色や形をした果物もいくつかあり、カミさんに聞くと、ナナイ(母親)に剥いてもらって食べたことはあるが名前は知らないなどと。
知らんのかーい。
店の人に名前を聞くと買わされそうなので、写真だけ撮って後で調べることにしました。
カミさんの故郷フィリピン、なかなかに奥が深いです。
To Be Concluded...
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